【超長文レポート】乗鞍天空マラソン2019

ライバルとの一戦、である。

ある意味で、UTMFよりも負けられない戦いだったかもしれない。

今まではこちらが勝手に意識して勝負してきた架空の戦いであり、きちんとお互いに存在を認識した上でのバチバチスタイルは実はこれが初めてである。

※女性にそんなライバル意識持つなんて小さいやつめ!と思われるかもしれないが、そうだとも。僕は小さいやつだ。ちなみにバチバチしていたのは僕だけかもしれない。


福島舞選手(以下、舞ちゃん)。

トレイルランニング業界では知らない者はいないくらいの美人トレイルランナー。めちゃくちゃ速く、今年の東京マラソンでは2時間55分の壁を破り、トレイルシーズンインしてからも多良の森、平尾台、七時雨山、UTNCと全部一位、勝ちまくっているツワモノである。そして、当時面識もないのにこんなアホみたいなブログに登場させても笑って済ませてくれる寛大な心を持ったレディでもある。

そんな舞ちゃんとは、最近よくロード練習を一緒にさせてもらっている。1kmとか800mとか、そんなインターバル中心の練習だと、当然メンズである僕に分がある。インターバル練に限っていえば、負けることは基本的にない。


しかしながら今回の「乗鞍天空マラソン」24-5kmくらいかけて1100m上昇し、18kmくらいかけて1100m降りてくる、完全なる峠走だ。


僕のトレイルランニング能力パラメータは偏っていて、下りは林道だろうがロードだろうがトリッキーなシングルトラックだろうがそれなりに自信がある。陸上部出身とかでない限り、そんなに負けることはない。体重の重さと、ゴリゴリ太い太ももが味方してくれる。

が、上りは偏差値がグッと下がる。下りの偏差値が65くらいとすると、上りは50ジャストくらいだ。特に「走って上る」林道やロードの上りは本当に弱い。味方だった体重は、重力とともに牙を剥いてくるのだ。

舞ちゃんはトップスピードこそ僕より低いものの、上りも下りも強く、バランスが良い。当然僕よりも軽いし、何より昨年出場している経験もある。


■乗鞍天空マラソンの作戦

僕の作戦はこうだ。前半の上りは、最悪負けても良い。なんなら5分くらいまでなら差を許容する。

体重と太ももに物を言わせた強烈な下りで一気にまくり、数分差でゴールする。これを「太もも戦略」と名付けた。まだ上りを克服できていない僕としてはこれしかない。

余談だが、本レースに出場している選手の中に数名、こちらの作戦ブログを読まれた方がおり、「後半の太もも力ですね!」と、声をかけられるたびに恥ずかしかったのは秘密である。


■計画は、破るためにある

さてさて、スタート時刻を謎に1分ほど経過してからスタート。ゆるい。ちょっと後方に位置どり過ぎたので、スピードをあげて前に出る。

こそこそと前を抜きつつ、20位くらいでステイ。最初の5kmはフラットなようなので、このまた3:50ペースでいく。


つもりが!!!何だかんだアップダウンがあり、スピードに乗ることができず、いきなり想定ラップを割ってしまうスピードに。なんかもう超つらいじゃん。あまりにも上りに弱過ぎ。


5kmを経過し、本格的に登っていく。この区間のペースは4:50/kmで見込んでいる。普段スピード練習では3:20/km以上のスピードでやってるし、フルのペースも3:50/kmくらいだし、斜度5%だったら+1分くらいでいけんだろ、と思って設定したこちら。

ええ、全く持ってイケませんでした。「ペース計画なんて最後はエイヤだよね」と言う奴がいましたが、あまりにも「エイヤ」が過ぎる。

僕のペースは1kmごとの平均でいうと5分45秒、つまり55秒ほど想定から遅くなっていた。斜度5%上がると、フルマラソンペースから+2分かかってしまうのか・・・調子が悪いとか、そういうことではなく、ただ重い。以下が計画タイムと実績タイムの差。「差」の欄に赤字で書いているところが想定を下回るペース箇所。前半戦が弱すぎる・・・真っ赤である。

そんなにペースが遅くなると何が起きるのか。


もちろん、福島舞登場、である。

10km地点過ぎですかね。なんかもう僕くらいになると、振り返らなくても気配でわかるんですよ。


「あ、これ後ろにいるな」


と。

僕、戌年生まれですからね。そういう嗅覚とか優れてる系男子なんです。いやー、予想より早かった。こんなに早く追いつかれると流石にまずいなー!

と、自分の直感を確かめるために振り返ると、もうほんとすぐ後ろにいるではないか。ビバ戌年。

「追いついたー!」とか言っている。完全にハンター系女子だ。

流石に山頂で5分以上の差はまずい。相手はサブスリーランナーだ。なんとか差は最小限にしておきたい。しかし、ここで抜かれ、差をつけられ始めると、「5分の壁」はいともたやすく破られてしまいそうだ。


とりあえず後ろに着く。彼女は女子一位でディフェンディングチャンピオン。箱根駅伝のように大会カメラ(バイクニケツで追っかけてくる)で追跡されている。有名人は大変だ。


素人ほど、カメラに写りたがるものである。僕は力を振り絞って舞ちゃんに付いて行き、その間カメラに映り込むことに成功した。埼玉出身だから致し方ない。

もちろんそんな動機でカラダは軽くなることはなく、徐々に離される。うーん、やばい。


やばいが、僕といえばスロースターター。まだエンジンに火が入っていない(とはいえ12kmくらい過ぎてるけど)タイミングで無理やり頑張るのはよろしくない。得意のくだりのために燃料をためておく必要がある。

それ以降はあまりペースを上下させず、きちんと補給を取り、たんたんと、時にはGoProで撮影しながら歩を進めた。(そして舞ちゃんの姿は見えなくなっていった)


20km地点くらいからだろうか。先行していたランナーたちがポロポロと落ち始める。一人一人拾いつつ、こちらは抜くたびに元気をもらう。

標高も2000mを超え、少し肌寒くなってくる。乗鞍岳は3000mを超える山で、その雄大さが伝わってくる。なかなか関東では味わえない山感。


そんなこんなで走っていたら、おやおや?あの腕の振り方は舞ちゃんでは?(僕はランニングフォームで人を覚える癖があるだけで、決して変態の類ではありません)

なんとなく、背中から疲れを感じ取った。そういえば僕を抜いていったときの呼吸も荒かった。これはもしかすると、下りに入る前に追いつけるかもしれない。そうなれば勝ちは確定である。


差を詰める。そのペースのまま一気に抜く手もあったが、じわじわと追い詰める。少し差を詰めては補給したりして、なかなか抜かない。精神を削りとる作戦だ(でもたぶん気づかれてなかったからあまり効いてなかっただろう)。次のエイドをポイントに抜き去り、差を一気につけよう。


想定していたエイドに到着。ここでほぼ追いつき、前に出る。23km地点くらいかな?


その時、前から豪速のランナーが下ってきた。上田瑠偉くんである。僕らの6キロくらい先を行っている。神か。世界王者はすごいな!



ちょうど二人でいた僕らを見て、

「勝負しないの!?」と声をかけてくる世界王者。


世界王者からすれば、僕らのペースはほのぼのペースに見えたのだろう。とっさに「勝負中!勝負中!」と回答する。そして、瑠偉くんの走りに触発され、俺も早く下りたい!と思い、ふんふん登る。

舞ちゃんより少し早く山頂に到着。たぶん順位は30-40位の間くらい。到達した時間は2時間14分。想定していたタイムより17分も遅い・・・このままでは3時間20分を超えてしまう!!


正直上りで勝てれば、下りでライバルに負けることはないと思っていた。ここからは自分との戦いだ。どこまで順位をあげられるか、どこまでタイムを縮められるか。


僕は集中した。いつも勝負の下りのとき、僕はSONIC THE HEDGEHOGのスタートダッシュをイメージする。さぁ、下りのスタート!

18kmずっと、ロードを駆け下りたことがらないからペース配分がわからなかったが、とりあえず3:40/kmを切るくらいのペースで入った。そのくらいのペースで行ききれば追いつかれることはないだろう。

1km経過。すでに2人抜く。2km経過。追加で2人抜く。

このくらいの順位だと、このペースでいけばかなりの人数を追い抜くことができそうだ。


抜く抜く抜く抜く抜く抜く抜く抜く抜く抜く!

絶大なる信頼を寄せる太もも。信じて極大負荷をかけまくる。


下り10km経過。足の付け根あたりが痛み出す。太ももはパンパン。胃も揺れまくっててなんだか不安な感じだ。

しかしあと8km、気合いで押し切れる距離。すれ違う後続選手やボラスタッフの皆様とハイタッチしながら元気をもらう。すれ違えるレースはこれがあるからいいよね。


割と上位にいた選手も拾いはじめ、徐々に抜き去るのも大変(相手も下りが速い)になってきた。それでも抜く。抜き去る。


ラスト5kmはほとんど一人旅。かなり足も辛くなり、少しペースも遅くなってきたが、それでも我慢する。

下り区間だけで15人はゆうに抜き去り、ゴール。下り区間の1kmあたりのラップは3'46と、計画より1秒遅かったので、もうすこしいけたかなー、と思いつつの総合15位。まあ、今のコンディションで言ったら満足しておかねばならないでしょう。


そして約10分後、ライバル舞ちゃんもゴール!女子二位を10分引き離す圧倒的な勝利でした。


■上田瑠偉化け物説

レース後、風呂に入って会場に戻り、舞ちゃんや瑠偉くんらと話してたんですが、瑠偉くんはなんと大会記録を大幅に更新する2時間37分という化け物みたいなタイムを樹立。彼のフルマラソンのセカンドベストなんだそうな笑 これはもう、笑うしかない。以下の動画に彼の走りが収められてるから見ていただきたい。上りなんか特に・・・これけっこう登ってるんだよ!!

この前世界遠征で勝利を収め、帰ってきたばかりなのに、この記録。

改めて上田瑠偉、は日本のトレイルランニング業界の宝的選手なんだなぁ、と感じました。


■乗鞍天空トレイル、結論面白い説

半ば「ノリ」で出場したレースですが、とてもおもしろいレースで、来年も出るか検討しちゃうほどよいレースでした。

景色もいいし、すれ違いの応援も良い。ガンバフンバなボランティアの皆さんもノリがよく、元気をもらえます。そして何より、トレーニングとして最高だと思います。これだけの距離を登って下るのは、足柄峠とかでも無理なので、自分の限界値を引き上げるためにも良いのではないでしょうか。

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