UTMF2019参戦記ー前半戦(スタート〜麓エイド)

念願の(?)UTMFのスタートは、いつの間にか鳴っていた。

僕はトイレ渋滞に巻き込まれたこともあり、スタート地点に到着したのはギリギリ10分前。それでも焦ることなく、MMAの渋井さんと談笑しながらリラックスムード&モード。スタート3分前くらいに列後方に入れていただき、人混みの中もみくちゃになりながらスタート。

スタートゲートはさながらバーゲンセールのようで人の匂いがすごかったけど、兎にも角にも僕のUTMFがスタートした。

今回、僕の目標は30位以内。タイムとしては、ITRAスコアから算出される予測タイムが26時を切るくらいだったので、適当にそのあたりを目標に設定した・・・とはいっても、全然レースプラン立ててないし、コースも頭の中に入っていない。相当適当な形でUTMFに臨んでしまっていたのである。ペース配分とか、全く考えてない。とにもかくにも適当。

万全な準備をして臨んだはじめての100マイルである信越五岳とは偉い違いなのである。

※信越五岳参戦記はこちらの2つの記事をぜひ。

はじめての100マイル | Mountain Martial Arts

トレイルランニングを始めると、「100マイル」という言葉が耳に入ってくる。100マイル=約160kmという途方もない距離を進むレースは、今ではトレイルランニング人気を支えるひとつのカテゴリーと呼んでも差し支えないだろう。実際、UTMBやUTMFといった100マイルレースを知ってトレイルランニングを始めたトレイルランナーは少なくない。 でも、100マイルの山岳を昼夜を問わず進む行為というのは、普通に生活していると想像がつかない。なぜ目指すのか。どうやって練習するの?そもそもその魅力とは。「?」があたまの中にたくさん浮かんでくる。 その疑問を紐解くヒントは、体験した人の中にあるのではないだろうか。そこで、この秋にはじめて100マイルに挑戦した市民トレイルランナーの渡邊大介くんの手記を掲載。仕事もアクティビティも熱意を持って全力で楽しむ。100kmレースの経験はあるが、100マイルはリアルではない。そんな大介くんがふとしたきっかけで一気に100マイルレースが視野にはいってきた。 挑戦の舞台は2018年9月15日から17日にかけて開催された信越五岳トレイルランニングレース(以下、信越五岳)。プロデュースするのは日本のトレイルランニングの草分け的存在でもある石川弘樹氏で、トレイルランニングを知り尽くした石川氏のプロデュースするトレイルレースはロケーションやホスピタリティのよさで人気があり、信越五岳はその筆頭だ。昨年が記念すべき100マイル第一回だったのだが、残念ながら台風接近のため短縮となり、今年が実質はじめての100マイルの距離での開催となる。 いち市民ランナーが挑んだはじめの100マイル。距離160km、累積標高6500m、制限時間32時間。楽しさも苦しさも、市民ランナーだからこそ共感できる壮大な旅のすべて。 9月15日〜9月17日にかけて開催された信越五岳トレイルランニングレース100マイル。昨年は台風接近のためコースが短縮されてしまい、実質今回が第一回目の開催となった本レースに参加してきました。 僕にとってはじめての100マイルレース。 30時間34分10秒。

Mountain Martial Arts(マウンテンマーシャルアーツ)公式サイト

はじめての100マイル(激闘編) | Mountain Martial Arts

2018年9月15日から17日にかけて開催された信越五岳トレイルランニングレース(以下、信越五岳)にて、満を持して初の100マイルレースに挑戦した市民トレイルランナーの渡邊大介くん。 いよいよレースがスタートする。160km先の彼方で見つけたものは。 9月15日19時30分、ついにスタート。 今年の信越は「霧」と「泥」のレースでした。気温は常に涼しく快適だったものの、とにかく路面がぐちゃぐちゃ、足首まで埋まってしまうようなサーフェスがいたるところにありました。また夜間は霧が深く、ヘッドランプを手に持って低く照らさないとよく見えない状況が長く続きました。 スタート直後、前半は勝手知ったる斑尾エリア。5年連続で「斑尾高原トレイルランニングレース」に出場している大好きなコースです。「斑尾高原トレイルランニングレース」であれば激走するコースを、100マイルなのでゆっくり走ります。意図的にゆっくり走り、順位を落としている計画的な自分。ちゃんと計画通りマネジメントできてるぞ、偉い偉い。そんなお利口な自分に笑みを浮かべる余裕すらありました。 とにかくスタートしたからの夜区間は気持ちよかった。スピードレースのような気負いもなく、呼吸が乱れることもない。前半の難所、斑尾山もいつの間にかピークハントし、第一関門の「レストランバンフ」では渋井さんに「かなりいい感じっす」とガッチリ握手。 そこから56km地点の「アパリゾート上越妙高」エイドではサポートクルーも待ってくれている。サポートクルーに何を話そうか、どんなお土産話を作れるかな?なんて思いながら走っていると、気分はどんどん上がってくる。サポートメンバーはエイドの価値を高めてくれる。そんなことを思いながら、前半戦は徹頭徹尾、ただひたすらに楽しんでいました。 そんな絶好調の僕に違和感が訪れたのは、朝を迎えた70km地点くらいからでした。 眠い、眠い、眠い。そして脚が重い。そびえ立つ直登、脚が進みません。感じたことのない絶望感、疲労感に思わずトレイル途中で膝を抱えて仮眠。人生初のレース中の仮眠でした。 いつからこんなに不調になったのか。すでに記憶が曖昧。全然気持ちが持ち直せない自分に困惑しつつ、止まっては歩き、また止まっては歩く。これを繰り返す。

Mountain Martial Arts(マウンテンマーシャルアーツ)公式サイト

とにかく、適当に、しかしひたすらに走る。

僕らのチーム(ダブサバ)からは、僕を含めて5人(世界の小松、春樹、高野、三田村の4名+僕)がエントリーし、僕は最後尾からスタート。じゅんぐりペースを上げていき、とはいえ無理をせず、流れに身を任せてランニング。


とにかく順調に歩を進めていたのである。


UTMFで女子トップ選手の走りを観察

しかしながら、UTMFのこの序盤のコース、若干飽きるのである。20キロ前後、ほぼ林道。走れるのはいいが、トレイルランニング感はほとんどなく、こういう環境に渡邊は弱い。なんだかぼーっとするし、睡眠不足?なのか、心なしか眠い気もする。

まずいまずい、と気を取り直していると、周囲には女子トップ選手たちが!

右に大石由美子選手、奥に星野由香里選手。彼女たちの前には今回日本人トップだった浅原選手や昨年日本人女子トップだった丹羽選手いて、適宜張り付いて観察させていただいた。

男子選手はマラソンでもそうだけど、気分と調子が乱高下して、だいたい最後にくたばる傾向が強い。一方で、女子選手は本当に淡々と走る。体のブレも少ないし、ミニマムな出力でとにかく淡々と走る

彼女たちのペースに合わせることで、僕もあまりペースを上げすぎず、体力を温存して前半戦のボス「天子山地」に差し掛かった。


UTMFでも「天子山地」にやられる

天子山地はコースの30km地点から47km地点くらいまでに横たわる山の塊で、どんなトップ選手でも数時間は要する前半の難所である。

僕は2014年のSTYでこの天子山地を経験しているんだけど、偉い目にあった。


確か2014年には昼間が熱く、当時「山力」が弱かった僕は(今でもあまり高くないが)あまり装備(特に水の残量)を確認せずに天子山地に挑んでしまい、山の中間地点で水がなくなるという大事件を巻き起こしてしまった。命からがらエイドまで到着した苦い経験があり、今回のUTMFでは富士宮エイドでは予備のフラスコに水を追加し、1.5リットル体制で天子に挑戦。

今年は万全のはず。ここから、温存した体力をここで炸裂させるはず・・・だった。


うーん、なんだこりゃ。

登りに差し掛かると、全く力が出ない。ハンガーノックという感じでもないんだけど、とにかく足に力が入らない。急峻な上りの途中で、休んでは上り、休んでいるときには5人くらいに抜かれ、また上り、また休んで・・・を繰り返していくうちに、どんどんと順位を下げていった。

チーム内ライバルである春樹に抜かれ、世界のこまちゅに抜かれ・・・僕のメンタルはそこそこやられ始めていた。こちらの動画にも情けない弱音が収録されている。

実際、野田武志さんが作成してくれた、完走者のラップラップタイムとラップ順位の比較表を見ると、この天子山地の区間は91人中89位とゲロ遅いのである(というか、僕よりも遅くてゴールまでたどり着いた人いたんや・・・謎に関西弁)

A2麓で文字通り「サポート」してもらい、元気をもらって前半戦終了

正直、ちょっとだけ「リタイア」も考えていた。いや、そこそこ考えていた。ずる賢い僕は、なるべく自分が傷つかないように、事前に見守ってくれているメンバーに「言い訳」をちょい出ししたりしていた。自分のことながら、情けないこと山のごとし。

天子山地を越え、A2麓に到着したのは、レース開始から7時間23分が経過したころ。あんまり気にはしていなかったけど、想定タイムより1時間以上遅い。遅いが、知っている人が待ってくれているエイドはこういうときに本当に待ち遠しくてたまらなく、待望のエイド到着だった。

順位は359位。ここから目標の30位を目指すなら、300人以上を抜かなければいけない。不可能だ。もう一旦目標のことは忘れて、UTMFそれ自体の完走を目指そう。そう、自分を言い聞かせる。


こういう時、エイドのサポートに対して、冷静になってしまう僕がいる。すごく気を使ってくれているのがわかる。それに対して、優しく返そうと思っても、なんだか余裕がない返しになってしまっている自分自身のこともよく分かる。

とりあえず、不安材料を一つ消そうと、荷物をサポートエリアに置いて、トイレ(大)を済ませる。トイレは小さい頃から僕のコンセントレーションスポット映画「ピンポン」のドラゴンのように、自分と向き合う時間


ネガティブな感情を脱糞とともに、外に放出し、気を切り替えてサポートエリアに戻ると、星野晃宏さん(星野由香里選手の旦那さんで、由香里さんのサポートで来ていた)が来てくれており、温かいお湯を僕に差し出してくれた。

星野さんは由香里さんのサポートを何回も経験しており、だからこそ優しい言葉で僕を励ましてくれた。むっちゃ元気出た。

さらにそこに軍曹のように水筒を持った髭が特徴的な男性が僕のところに近づいてくる。「100マイルを100回走る」ことを人生の夢に掲げている、Mr.100マイラーのTomoさんだ。

Tomoさんからは「男を見せろ!」と力強い言葉をもらい、エイドを後にした。

あとから聞いたところによると、サポートについてくれていた相方さんが「リタイアするかも」と弱気な僕が「どうしたら元気になってくれるか」を考えて、二人に声をかけてくれていたらしい。なんていいやつなんだ。

大変元気になりました。ありがとね。


そして、ここから怒涛の追い上げが始まる。


続く》》》UTMF2019参戦記ー中盤戦①(麓〜本栖湖エイド)



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